東京大学LS期末試験【答案】上級民事訴訟法(2015)B評価

平成27年/東京大学LS期末試験【B答案】上級民事訴訟法

第一.問1

1.XはYに対し、本件敷金の返還請求権を有していることを確認する訴えを裁判所に提起することが考えられる。

(1)確認の訴えをするにあたっては確認の訴えの利益が必要である。確認の訴えは執行を有しておらず、紛争の解決としての実効性が比較的弱く、さらに確認の対象は無限定に拡大するおそれがある。したがって、確認の訴えの利益は紛争の解決に必要かつ適切な場合のみに限定するべきである。具体的には①確認対象選択の適否②即時確定の利益③方法選択の適否から判断する。

(2)本件においてXは自己の敷金返還請求権という権利・法律関係について、これを有しているという積極的な確認を求めている。しかし、現時点で本件賃貸借契約が終了していないことから、将来についての権利関係の確認を求めるものとなるようにも思われ、現在の権利関係にあたらないとして、対象が不適切とならないか。敷金は明渡後に、明渡しまでに生じた賃借人の一切の債務を差し引いてなお残額があることを条件として返還が認められるという性質を有する。そうだとすれば、未だ賃貸借契約が終了しておらず、明渡しが未了の場合においても、上述の条件付きの権利として現在存在しているものといえる。よって現在の権利関係であり、対象選択として適切である(①)。

また、Yは本件敷金がない旨、および、本件敷金の差入れがあるとしても返還義務がない旨主張しており、Yが争う姿勢を見せていることから、原告Xの敷金返還請求権という権利に不安が現存している。よって即時確定の利益を有する(②)。

さらに、上述の敷金返還請求権の性質から、賃貸借契約が終了していない段階では当該請求権は発生しておらず、より紛争解決に資する給付訴訟は提起できない。そのため、現時点では確認の訴えしかなしえず、方法選択としても適切である(③)。

よって、Xの本件請求には確認の利益が認められる。

2.以上より、XはYに対し、本件敷金の返還請求権を有していることの確認の訴えを提起することができる。

第二.問2 設問(1)

1.Zに対する引受けを命ずる旨の決定の理由

(1)「当事者」たるXがした「申立て」は、本件訴訟の「係属中」に「第三者」たるZが本件建物収去土地明渡「義務」の「全部」(民事訴訟法50条1項)を承継したとして行われた義務承継人の訴訟引受けの申立てである。これが認められるには、Zが本件義務を「承継した」者にあたる必要がある。

(2)訴訟承継が規定されている趣旨は、紛争をその手続内で完結させることにより紛争の解決を図ることで後の訴訟等を防止し、一回的に解決をするという点にある。したがって、「承継した」者とは、紛争の主体たる地位を引き継いだ者をいうと考える。

本件において、ZはYから本件建物を譲受しており、Zが建物を収去しなければXの目的は達成できないという関係になり、Zは収去及び明渡しを争うものと思われるので、紛争の主体たる地位を引き継いだ者にあたる。

また、仮にZ自身に何らかの固有の抗弁があったとしても訴訟において主張できるので、固有の抗弁を有することを以て、「承継した」者にあたらないということはない。

(3)したがって、Zは「承継した」者にあたるので、50条1項の要件を満たす。よって、これらの理由から本件決定がなされたといえる。

2.Zの争い方

(1)Zの争い方としては2通り考えられる。1つ目はYの主張するYA間の賃借権の存在につき、主張立証を重ねる、というものである。しかし、YZ間が無断転貸ならまだしも、無断譲渡(民法612条2項)であることから、どのみち後に612条2項に基づいて解除されるおそれもある。また、Yが賃料の債務不履行がある等の事情があれば債務不履行解除(415条)のおそれもある。

(2)2つ目にZとしては、Xに所有権がそもそもないのでXの請求は認められない、という理由で争いたいと考えると思われる。しかし本件ではYが先にXが本件土地の所有権を取得した経緯についてのXの主張を全て認める旨の陳述をしている。これが裁判上の自白(民訴法179条)にあたるとすれば、Zはこれを争えないということになるのではないか。

ア.まずYの自白にあたるかを検討する。間接事実や補助事実は証拠と同様の働きをするので、これについてまで自白の拘束力を認めると、自由心証主義(247条)を大幅に制約することになる。したがって、自白の対象となる事実は主要事実に限られる。

本件においてXは所有権の来歴として被相続人Aからの相続という事実を主張しており、これはXの請求原因のうち所有権がXに帰属していることを基礎づける事実であり、主要事実にあたる。そしてこれはXが主張立証すべき事実であり、Xに証明責任のある事実であるので、これを認める旨のYの陳述は自白である。そうであれば信義則(2条)上、相手方の同意、再審に準じる事由がなければ争うことはできないようにも思われる。

イ.本件ではZは引受承継の手続によって訴訟に引き込まれたのであり、同時審判申出共同訴訟(41条1項~3項)の規定が準用される(50条3項)。同時審判申出共同訴訟はあくまで通常共同訴訟である。したがって、自白の効力は当事者ごとに生じるのであり(39条)、Yが自白したとしても、Zがそれを争うことは可能である。

ウ.よって、自白の撤回事由等がなくても、ZはXの所有権の来歴につき争える。

第三.設問(2)

1.本件では前設問と異なり、Zへの譲渡が確定判決後となっている。そして既判力(114条1項)は審理の弾力化から訴訟物に生じるので、前訴の既判力はXの建物収去土地明渡請求権の存在について生じる。また、事実審の口頭弁論終結時まで当事者は訴訟資料を提出でき、手続保障が及んでいることから、既判力の基準時は事実審の口頭弁論終結時である。したがって、この基準時以前の事由を後の訴訟で主張することはできなくなる(遮断効)。

また既判力は手続保障充足による自己責任が根拠であるので、手続に関与した当事者に及ぶとするのが原則である(115条1項1号)。さらにこの根拠から、代替的な手続保障が前主によってなされている場合にも既判力は及ぶといえる(115条1項3号)。このことから「口頭弁論終結後の承継人」とは、紛争主体たる地位を引き継いだ者をいい、Zはこれにあたる。したがって、前訴の既判力はZに及ぶ。

2.これらのことから、後訴においては前訴確定判決の既判力に矛盾する主張をZがすることはできないという点で意味を持つ。反対に矛盾しない主張はできるので、上述の基準時後に生じた事由等を主張して争うことは可能である。

以上

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