東京大学過去問【論文再現答案】民事系(2013)

平成25年度/東京大学過去問【論文再現答案】民事系

第一.設問(1)

XはY社に手形金の請求をなしうるか。

1.本件手形は何ら権限のないCが偽造し、作成したものであるから、Cの行為は無権代理である。Y社の追認(民法116条本文類推適用)なき限り、代理は有効とならず、Xの請求は認められない(113条1項)のが原則である。

2.しかし、Cは会計事務員として手形振出に関わる業務を任されていたことから、民法の表見法理の規定(109条、110条、112条)の類推適用をして、Xを保護することはできないか。本件では代理権を授与されたことがないので、112条の余地はなく、また表示がされたこともないので109条の余地もない。そこで110条の類推適用を検討する。

(1)表見法理の趣旨は、虚偽の外観を信頼した第三者を真の権利者の帰責性の下に保護することで、取引の安全を図るという点にある。そして、この趣旨は偽造の場合にも妥当する。そこで①虚偽の外観があり、②被偽造者に①の作出について帰責性があり、③手形が適式なものであると第三者が信頼していた場合には、表見法理の規定を類推適用できると考える。

(2)本件手形には会社名、代表者名のゴムの記名印、会社印、代表者印が押捺されており、手形は適式である外観がある(①)。Y社は手形作成に必要な会社印や代表者印を簡単に持ち出せるようなずさんな保管の仕方をしており、また他の事務の分担へ変更されたにも関わらず、会社事務を未だ続けるCを漫然と放置していた(②)。

表見法理が成立するためには、Xだけではなく、手形取引の直接の相手方であるBも善意無過失である必要がある。Xは当該手形を適式なものと信頼し、裏書譲渡を受けているので善意無過失である。しかし、BはCと懇意にしていたという事情があり、金融上の困窮を救済してもらう目的で、自ら約束手形用紙に収入印紙をあらかじめ貼付して持参し「迷惑はかけない。一度だけでよいから」と発言もしている。これは不正に手形を偽造して欲しいという意図のうかがえる言動であり、Cの振出す手形が適式なものではないと知っていたといえるので悪意である。したがって③を満たさないので、民法110条の類推適用によってXを保護することはできない。

3.偽造したCはY社の「被用者」であることから、使用者責任(715条)の追及ができないか。行為の外形から客観的に被用者の職務の範囲内に属するものと認められる場合には「事業の執行につき」なされたものといえる。

Cは本件手形を振出した時点では、Y社の手形振出準備行為担当を外されていたものの、その後も会計事務員として手形を銀行に持参するなどの事務をそのまま継続して行っていた。行為の外形から見ると、手形の振出行為はCの職務の範囲内であり、「事業の執行につき」なされたものといえる。Xは善意無過失なので、Y社に対して使用者責任を追及することができる。

4.以上より、Xは使用者責任に基づく500万円の損害賠償をY社に請求することができる。

第二.設問(2)

1.XはEY間の売買契約を詐害行為(424条)として取り消し、登記をYの下へ戻すよう請求することが考えられる。Yに強制執行をするためには、登記名義がYであることが必要だからである。請求の趣旨は、Eは甲土地につきY名義への所有権移転登記手続請求をせよ、となる。

2.Xは勝訴要件として①保全の必要性(その内容としてY社の無資力)、②被保全債権の存在の内容として、Y社に対する500万円の債権が、EY売買よりも以前に存在していたことを主張・立証すべきである。

第三.設問(3)

1.AのX主張の請求原因事実をいずれも認める旨の発言は、相手方の主張と一致する自己に不利益な事実の陳述であり、裁判上の自白(民事訴訟法179条)にあたる。裁判所と当事者は当該事実の存在に拘束され(不要証効)、Aが自白を撤回することは禁反言(2条)から認められないのが原則である。

そうだとしても、相手方の同意がある場合、刑事上罰すべき他人の行為によって自白がなされた場合(338条5号参照)、自白が真実に反し、かつ錯誤による場合には、禁反言が妥当しないので、自白の撤回も認められる。

本問において、旧Y社はS社に商号が変更しており、さらに新Y株式会社が設立されている。旧Y社と新Y社は別の会社であるから、Aの自白は真実に反しており、かつ錯誤が反真実によって推定されることで自白の撤回が認められるようにも考えられる。

2.しかし、本件商号変更と会社設立はXに対する債務の履行を回避するためになされたものである。そもそも、法人格が法律によって付与された趣旨は、認めた方が経済活動が簡便で、社会的に有用である点にある。そうだとすれば、①会社が実質的に同一であり、②不利益をかわす手段として利用されたと評価できる場合には、当該法人格は形骸化しており、社会的有用性も認められないので、その法人格を否認できるものと考える。

本問において、新Y社と旧Y社は本店所在地、目的、役員が同一であり、商号もYと共通であるから①を満たす。商号変更、設立の時期が第一審終結後であり、Xによる債務の履行請求を免れる手段として行われたことが推認できるので②も満たす。
よって、新Y社たるF社と旧Y社は同視でき、法人格は否認される。

以上より、控訴裁判所は撤回を認めず、Xの認容請求を維持すべきである。

以上

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