東京大学過去問【論文再現答案】民事系設問1(2015)90.5点

平成27年度/東京大学過去問【論文再現答案】民事系設問1

第1.設問(1)

1.Aは乙会社に対して本件事業譲渡(会社法467条1項2号)を詐害行為として取り消し(民法424条1項)、甲会社から譲受した不動産や原材料、製品、金銭等の財産を自己に引き渡せとの請求をするものと考えられる。

(1)被保全「債権」があるか。Aの甲会社に対する損害賠償請求訴訟は控訴審に係属中で確定していないので、Aは本件事業譲渡以前に債権を有していたとはいえないとも思われる。しかし、本件訴訟は第一審でAが勝訴しており、さらに控訴審でも甲会社の敗訴が濃厚であるのだから、Aが甲会社に対する損害賠償請求権が得られるのがほぼ確実な状況となっている。そうとすれば、上記債権が事業譲渡以前に存在しており、これが事業譲渡によって害された場合と同視できる。また、本件損害賠償請求権は金銭債権である。
したがって、被保全「債権」が認められる。

(2)「債務者が債権者を害することを知って」といえるか。
ア.甲会社のほとんど全ての財産が乙会社へ移転されており、甲会社は全く形だけのものになっているので、無資力である。

イ.詐害性の有無は、①行為の客観的性質②行為者の主観的要素③手段の相当性を相関的に考慮して判断すべきである。
本件において、甲会社はその有する財産のほとんどを乙会社へ流出させており、当該行為は債権者を害する程度が大きい(①)。また、甲会社は本件事業譲渡を債務をまぬかれる主観的意図で行っており、会社の事業を発展させるとか、有用の資に充てる等の正当な意図ではない(②)。さらに、敗訴が濃厚な控訴審係属中というタイミングで上記行為を行っており、手段の相当性を欠く(③)。
したがって、本件行為に詐害性が認められる。

ウ.そうとしても、事業譲渡は会社の組織を再編するという性質を有する行為であるため、「財産権を目的としない法律行為」(民法424条2項)にあたり、詐害行為取消は認められないのではないか。
たしかに、事業譲渡は上記のように組織を再編する性質を有するものであるが、実際のところ権利義務を移転させるものにすぎない。また、取り消しを禁ずる明文もない。さらに、詐害行為取消は債務者の財産管理への介入であることから、その効力は相対的なものであり、多くの者が携わる会社の組織に関する行為であっても、対外的な効力に影響はない。その上、事業譲渡無効の訴え等の規定はないので(会社法828条1項参照)、債権者を保護すべき必要性が高い。
したがって、「財産権を目的としない法律行為」にはあたらない。

エ.よって、「債務者が債権者を害することを知って」といえる。

(3)「利益を受けた者」は乙会社の代表取締役たるDとも思われるが、Dは名目上の取締役で実質的な経営を行っているのはBである。
したがって、「利益を受けた者」はBであり、Bは詐害行為を行った当人であるから「債権者をを害すべき事実を知らなかった」とはいえない。

(4)金銭や動産等は、債務者が受け取らなければ財産保全の目的が達成できないので、自己への直接の引き渡しも認められる。その場合、自己の被保全債権と債務者への返還債務を相殺(民法505条1項)できる。不動産は債務者名義の登記をすればよいので、自己名義の登記手続を請求することはできない。

(5)以上より、Aは乙会社に対して事業譲渡を取消し、不動産の登記を甲会社名義に戻し、金銭や動産は自己へ引き渡すよう請求することができる。

2.「譲渡会社の商号」の続用

3.法人格否認

以上

 

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