権利能力なき社団の要件と例!判例/登記名義は?任意団体との違い

権利能力なき社団とは?【具体例】

権利能力なき社団とは、法人格がある社団と同じようなことをしている(社団としての実体がある)のに、法人登記とかしてるわけではないので権利能力はあたえられていない団体のことです。

社団というのは要するに、人の集まりです。人なんてどこでも集まってますし、その集まりのすべてが法人登記をするってのは考えられませんよね。

手続をすれば法人になれるけどいちいち手続なんかしてないという団体や、法人を設立している途中の団体が権利能力なき社団にあたります。「任意団体」ともいわれます、意味は同じです。

もっとわかりやすい例でいえば、大学のサークルやPTAです。これらの団体は、いわば親睦会ですから公益目的がなく、公益社団法人にはなれません。さらに、営利を追求するわけでもないので、法人格を取得することもないです。

法人格がないので、法人の規定を適用することはできませんが、実体は社団として活動をしているため、もろもろの取引をどうやって規律したらいいのでしょうか。

たとえば、大学のオーケストラサークルで、みんなで買った楽器が10個くらいあったとします。この楽器の所有権はどこに帰属するのでしょうか。オーケストラサークルは法人登記をしていないので、権利能力なき社団です。権利能力がないので、サークルは所有権の帰属主体になることはできません。

 

ではサークルの部長に帰属するのかというと、それもへんですよね。みんなで買った楽器なのに、部長のものになるなんておかしいです。

 

じゃあやっぱりメンバーみんなのものということになるのが自然な気がしますが、それってどういう状態なのでしょうか。たとえば、メンバーのうちの1人がサークルをやめることになったとき、

みんなの楽器ってことは、1個分くらいはわたしの楽器ってことだから、もらっていってもよくない?

やばい人

 

とかいい出したら、なんかやばくないですか?団体に権利能力がないことから、こういった財産関係の問題がでてくるのです。

権利能力なき社団の要件4つ/判例(昭和39年10月15日)

世の中にはたくさんの団体があります。でも、その全ての団体が権利能力なき社団にあたるわけではありません。

権利能力なき社団の成立要件については判例があります。

権利能力なき社団の要件
  1. 団体としての組織を備え
  2. 多数決の原理が行われ
  3. 構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続し
  4. その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定している

権利能力なき社団の財産は構成員全員に総有的に帰属する

権利能力なき社団にあたる場合、その財産関係はどのように決められるのでしょうか。先ほどのサークルの例にもあるように、楽器は「メンバーみんなのもの」にするしかないですよね。つまり、みんなで共同してもっているかたちになります。

この共同というのは「総有」を意味しています。総有というのは、みんなで共同してつかえるのだけれども、各々のメンバーの持分はありません(使用・収益OK、処分NG)

権利能力なき社団の権利義務は構成員全員に総有的に帰属する(判例)

みどりちゃん

各メンバーの持分がないから、もちろん持分の分割請求はできないし、団体をやめたときでも持分の払戻請求をすることはできません。

総有と共有と合有のちがい

何人かで共同で財産を所有して使用収益をするかたちには、「総有」のほかにも「共有」と「合有」という類型があります。なにがちがうのでしょうか。

共有(249条)は、各メンバーに具体的持分があります。具体的な持分があるので、持分の分割請求もOKですし、自分の持分の範囲内では自由に処分もすることができます。

合有は、各メンバーに具体的持分がありません。そのため持分の分割請求はできません。でも、その団体をやめるときには持分の払戻請求ができます(=潜在的持分がある)。大学生協の組合費は、卒業したり退学したりして、大学から離れるときには返してもらえますよね。

総有は、具体的持分もないし、潜在的持分もありません。だから持分の分割請求ができないのはもちろん、団体をやめるときに持分の払戻請求もできません1)最判昭和32年11月14日

具体的持分 潜在的持分
共有 ある
(持分分割請求〇)
(持分の処分〇)
合有 ない
(持分分割請求×)
(持分の処分×)
ある
(持分払戻請求〇)
総有 ない
(持分分割請求×)
(持分の処分×)
ない
(持分払戻請求×)

権利能力なき社団の登記方法/代表者個人名義か全員の共有名義

たとえば権利能力なき社団が不動産をもっていたとして、その登記はだれの名義ですればよいのでしょうか。

団体名義での登記をみとめると架空の名前で登記がし放題になるので、財産隠しに利用されてしまうおそれがあり、社団名義の登記はできません

また、実務上、代表者の肩書を付した登記もできません

構成員全員による共有の登記をするか、団体の代表者個人名義で登記をするかしかないと考えられています。

権利能力なき社団の登記まとめ
  1. 社団名義の登記→×
  2. 代表者の肩書を付した登記→×
  3. 構成員全員による共有登記→〇
  4. 代表者個人名義で登記→〇

権利能力なき社団の債務/構成員たちは社団の債務を負担しない

権利関係と同じように権利能力なき社団の債務も、構成員全員に総有的に帰属します。権利能力なき社団の総有財産だけが引き当てとなり、構成員たちはいっさい個人の責任を負いません

権利能力なき社団にたいして債権をもっている人は、その構成員ひとりひとりのプライベートな財産から支払えという要求をすることはできません。それは代表者にたいしても同じです。

オーケストラサークルに楽器を売った楽器屋さんはその楽器代金について、サークルのみんなでもっている財産から支払ってもらうことができます。

楽器屋さんは、サークルの各メンバー個人にたいして、「君もサークルの一員なんだから、楽器代の一部を自分の貯金から払ってよ」と言うことはできません。

さらにサークルの部長にたいして、「お前は部長で代表者なんだから、責任もって自分の貯金から楽器代金を払ってよ」と言うこともできません。あくまでサークルの総有財産の中から、債務を履行すればよいのです。

脚注   [ + ]

1. 最判昭和32年11月14日

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